さて、SNSを始めてから数ヶ月が経ち、今ではフォロワーさんの数も増え、
私の発信する情報も、少しは世の中の役に立っているような手応えを感じてはいるが、
最初から順風満帆だった訳ではなかった。
誰も見てくれないのだ。
そりゃそうだ。最初はフォロワーさんが「0人」なのだから。
5回もポストをした後に、こんな単純なことに気付くという間抜けっぷりである。
それにしても… みんなどうやって0を1にしているのだろうか?
よくよく考えてみたら、作りたてのアカウントなんて、無人の荒野にオープンしたお店のようなものであり、それがどうやって認知されるようになるのか…?
インターネットに疎かった私には、皆目見当もつかなかった。
一休さんのように "とんち" をきかせてみたが、答えが全く分からない。
心が挫けそうになった。
いや待て、最初は誰でもフォロワー0人の状態から始める訳ではないか。
みんな「なにか」をして、フォロワーの数を増やしていったはずだ。なにか方法があるはずだ… なにか… ‥
私は子どもの頃、自分の名前が嫌いだった。
努(つとむ)とは名ばかりで、努力できる力が他の人よりも劣っていたからである。完全に名前負けしていたのだ。
受験勉強の時に、そのことが身に染みて分かった。
周りは努力の化け物みたいな人ばかりで、起きている時間は全て勉強に捧げる みたいな人が、ゴロゴロいたのだ。
「なぜ自分はこの人たちのように努力できないんだろう」と嘆いた。
とはいえ私も、「自分の将来のため」そして「親の期待に応えたい」という想いもあり、自分なりに懸命に努力した。
真正面から彼らと競っても負けるに決まっている。だから私は、工夫をした。知恵を使った。
まずは図書館に行き、
「記憶のメカニズム」とか、「効果的な学習の方法」「どういう参考書が優秀なのか」とか、あるいは私は身体も弱かったから「健康維持の為の方法」とか、
受験勉強に役立ちそうな本を、手当たり次第に読んだ。
当時はネットも無かった時代なので、本から、そういった事を学んだ。今にして思えば、私は本を読むことが好きだった。
そういった甲斐もあってか、私は周りの人達より少ない勉強時間ながらも、何とかそれなりに良い大学に合格し、卒業後は聞けば誰もが知っている大手企業に就職することもできた。
また、受験勉強を経験したことによって「努力できる力」のようなものも、以前よりは身についたと思う。
そして、大学生になったあたりからは、自分の名前に劣等感を抱くこともなくなり、自分の名前にいくばくかの誇りも持てるようになった。
親はもしかして、まるで努力があまり得意でない子であることを見越して、「努力を頑張りなさい」という意味を込めて、努(つとむ)と名付けてくれたのかもしれない。
大人になった今では、そんな風に考えられるようになった。
その時のことを思い出した。
そうだ。最初からダメだと思って諦めるのではなく、まずは「やってみる」のだ。
出来ることを試してみるのだ。そうすれば道は開けていくものだ と、あの時に学んでいたはずではないか。
自分の頭で考えて分からなかったのだから、今度はインターネットに頼ろう。 それでも分からなかったらSNS初級者に向けた本を買ってこよう。確かそういう本も、書店に置いてあったはずである。
キーワードを打ち込んで検索してみると、案外、あっさり答えが見つかった。
「フォロワー0人から~」みたいな記事が、山のようにヒットした。
自分が疑問に思っていることは、大抵、他の誰かも疑問に思っていることなのだ。
「あ~そうか。アカウントによっては "相互フォロー" をしている人もいて、そういう人をフォローすればフォローが返ってくると。 私がフォローした数名のアカウントは、厳選した一部の人しかフォローしていない人気のアカウントだ。だからフォローが返って来なかったのだ。」
あるいは、トレンドやリプライの活用、ハッシュタグの利用、検索機能からの流入 等々
フォロワー0人の状態でも見てもらえる方法は色々とあり、興味深いポストをしていれば、誰かの目に留まって、取り上げてくれる可能性があるようで、そのようにして、フォロワーも増えていくそうだ。
無人の荒野にお店をオープンしたはずなのに、
「SNSという世界」では、こちらから情報さえ発信していれば、誰かが私のお店を発見してくれたり、お店にメッセージをくれたり、またはお店のファンになってくれたりもするのだ。これは面白い。
やってみて良かった と思った。
私は、「努力できる力」はそれほどではないかもしれないが、「行動力」なら、人並み以上にあると思って生きて来た。
私も、新しいことにチャレンジしている人の姿を見ると、勇気や力をもらえる。
ほんの数週間前だろうか、80歳を超えたおばあちゃんが「ゲーム実況」を始めて、動画投稿者として活動しているというニュースを見た。
すごい行動力だと思ったし、80歳を超えてからでも新しいことを始められるのだ と、胸を打たれるものがあった。
そのニュースを見たことが、今の自分にも何かしらの良い影響を与えてくれていたように思う。
私も先日、50歳から新しく「SNS」を始めた。
件のおばあちゃん程のインパクトは無いかもしれないが、私も誰かにとって、少しでも勇気や力を与えられればいいなと願う。
(第6話へ続く)